ロゴを変えるだけじゃない。不動産会社の“再生”を実現するブランディングの力
- 陽一 橘
- 2016年7月11日
- 読了時間: 8分
更新日:1 日前

はじめに|なぜ今、「企業の印象戦略」が問われるのか?
不動産業界はいま、かつてない変化の波に直面しています。全国に12万社以上ある不動産会社の中で、“ただ存在しているだけ”では選ばれなくなったのが現実です。
人口減少・空き家の増加
物件の横並び化
顧客の価値観の多様化
情報収集手段の進化(SNSや口コミ)
こうした背景の中で求められているのが、「会社として、どう見られるか」=ブランド力の再構築です。
「ロゴを変えただけで、本当に意味があるの?」そんな疑問の声もありますが、それはブランディングの一部にすぎません。
ブランディングとは、企業の理念・価値観・行動・ビジュアルを一貫させ、信頼を得るための“再生戦略”。
本記事では、本質的なブランディングの定義と要素、クラスコの実例、そして得られる成果について、分かりやすくご紹介します。
なぜ今、不動産会社に本質的なブランディングが必要なのか
──“見た目”よりも、“中身”が問われる時代
人口減少、空き家の増加、IT化、そして顧客ニーズの多様化。不動産業界は現在、構造的な転換点にあります。
これまでのように「物件があるから集客できる」「とにかくチラシを撒けば反響がある」──そんな時代は終わり、「どんな会社か?」が選ばれる理由になりつつあります。
📉 変わらないのは“不動産会社へのネガティブイメージ”
いまだに多くの人が持っているのが、以下のような先入観です。
根強い印象 | 顧客の心理 |
強引な営業をされそう | 「なるべく関わりたくない」 |
対応にムラがありそう | 「担当者ガチャになりたくない」 |
信頼できるか分からない | 「慎重に比較したい」 |
このような「業界の壁」を越えるには、単に“感じよさそう”な広告やロゴを出すだけでは不十分です。
🧭 “中身から変える”ことが、これからのブランディング
本当に信頼を得るには、企業の内側──
なぜこの仕事をしているのか(理念)
誰にどんな価値を届けたいのか(価値観)
それが日々の行動と一致しているか(行動)
をしっかりと言語化し、社内に浸透させた上で外部に伝えていくことが必要です。
「ロゴを変えたのに、対応は前と同じ」それでは、ブランディングは意味を持ちません。
本質的なブランディングとは、企業の“中身”を整えた上で、それを誠実に伝えること。それこそが、いま不動産会社に求められている姿勢なのです。
ブランディングの3要素:MI・BI・VIとは
──「理念・行動・デザイン」の一貫性が信頼を生む
「ブランディング=見た目を整えること」そう思われがちですが、本質的なブランディングは“中身と外見の一貫性”にあります。
この考え方を整理するのが、3つの要素:
MI(Mind Identity)
BI(Behavior Identity)
VI(Visual Identity)
それぞれが連動してはじめて、顧客や社会に“伝わるブランド”が生まれます。
✅ ブランディングの3要素まとめ
項目 | 意味 | 具体例 |
MI(マインド・アイデンティティ) | 企業の内面──使命・理念・価値観 | 「地域に根ざした暮らしの安心を届ける」などのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー) |
BI(ビヘイビア・アイデンティティ) | 実際の行動・文化に理念を落とし込むこと | 「お客様第一」と掲げたら、即レス・丁寧な言葉づかい・迅速な提案を実践する |
VI(ビジュアル・アイデンティティ) | ロゴ・色・フォント・空間など“見た目”の統一 | ロゴ・名刺・Web・店舗内装まで同じ世界観で設計する |
💡 ロゴ変更は“最後”であり、全体の一部
多くの会社が「とりあえずロゴから変えよう」と考えますが、本来ロゴは「企業の在り方(MI)」と「それに基づく行動(BI)」が整理された後、“視覚的に伝える仕上げ”として設計されるべきものです。
🔁 企業の「考え方」が、社員の「ふるまい」になり、それが「デザイン」によって、社外にも伝わる。この“循環”こそが、本質的なブランディングの姿です。
クラスコの事例に学ぶ、ブランディングの進め方
──理念・行動・デザインを統一した「印象改革」の実例
クラスコは、かつて「タカラ不動産」という社名で事業を展開していました。
しかし、若年層や求職者から「古い印象を持たれやすい」という課題を受け、ブランドの再構築プロジェクトをスタートさせました。
その取り組みは、単なる“デザイン変更”ではなく、企業の在り方そのものを見直すプロセスでした。
✅ MI:社名・理念の再定義で「想い」と「姿勢」を明文化
旧社名「タカラ不動産」から、新社名「CRASCO(クラスコ)」へ刷新
「クラスコ」は、「暮らす」+「フラスコ」を掛け合わせた造語 → 化学の実験のように、新しく役立つ住まいや暮らしのアイデアを生み出す企業姿勢を表現
新アイデンティティは「住まいと暮らしのアイデア創造企業」
コーポレートカラーには先進性を表すクラスコオレンジを採用し、印象も一新
✅ BI:「行動」がブランドを裏切らない仕組みづくり
社員教育にMVVを浸透
接客や提案時の言葉づかい・対応スピードの見直し
採用活動でも「らしさ」が伝わる伝達方法を整備
🌱 「こうありたい」だけで終わらせず、「こう行動しよう」にまで落とし込むことで、社内の一体感と信頼感が高まりました。
✅ VI:目に見える“統一されたブランド体験”を創出
ロゴデザインを刷新(クラスコオレンジ=親しみやすさ+信頼)
店舗を「カフェのように入りやすい空間」へリニューアル
名刺・Webサイト・SNS・パンフレットなども、すべての接点をブランドトーンで統一
🌟 実際に得られた変化
項目 | 変化・効果 |
認知度 | 新社名とデザイン刷新により、地域内での存在感が向上 |
採用力 | 説明会やWeb応募の反応が改善。企業理解の促進へ |
社員意識 | 「ブランドを体現する一員」という意識が社内に定着 |
顧客信頼 | 「この会社に相談したい」という声が増加。リピート・紹介が増えた |
ブランディングの効果は、「見た目」ではなく、「信頼の総量」に現れる。クラスコの取り組みは、それを証明しています。
ブランディングがもたらす具体的な効果
──“信頼と差別化”は、経営成果に直結する
ブランディングは「見た目の刷新」にとどまらず、経営全体に好循環をもたらす“推進力”になります。ここでは、企業が実際に得られる3つの代表的な効果を紹介します。
1. 顧客からの信頼獲得と差別化
──「この会社に任せたい」と思われるブランドへ
Before | After(ブランド構築後) |
「どの会社も似て見える」 | 「会社の考え方まで伝わってくる」 |
「営業が不安、対応にバラつきがある」 | 「対応も印象も一貫していて安心できる」 |
ブランドによって「企業の顔」が明確になれば、価格や物件スペック以外の“選ばれる理由”が生まれます。
🌟 結果:価格競争からの脱却 → 粗利率の安定へ
2. 社員のモチベーション向上と採用力強化
──“働く意味”が共有される組織へ
ブランドとは、社内にとっての「行動指針」でもあります。
経営者の想いが明文化され、社内で共有される
行動の基準が統一され、現場判断の精度が上がる
「自分の仕事が会社の価値とつながっている」と感じられる
また、求職者に対しても、ブランドがあることで共感型の志望動機が生まれやすくなり、定着率もアップします。
🌟 結果:社員の自発性が高まり、社外への魅力発信力も強化
3. 収益の安定化と向上
──“信頼され続ける構造”ができる
ブランドが確立すると、顧客との信頼関係が深まり、リピーターや紹介といった広告に頼らない集客チャネルが増えていきます。
ブランドで問い合わせ件数が安定
競合と比較されても“印象”で勝てる
継続的な関係性が収益化に直結する
🌟 結果:広告費を抑えながらも、高品質な顧客との関係構築が可能に
「信頼されている会社」と「なんとなく選ばれている会社」では、5年後・10年後の成果がまったく違ってきます。
本質的なブランディングで企業の未来を築く
──「選ばれる会社」へ進化するために
ブランディングとは、単にロゴやパンフレットを整えることではありません。
それは、企業の理念・行動・デザインすべてを一貫させ、「私たちはこういう会社です」と信頼をもって伝えるための仕組みづくりです。
✅ ブランディングとは、“企業の人格”をつくること
企業の考え方(MI)を明確にする
行動(BI)でそれを体現する
デザイン(VI)でそれを視覚化する
この一貫した流れによって、はじめて**「選ばれる理由」**が可視化されます。
💡 ブランドという“無形資産”を育てる視点を
目先の反響や成約だけを追いかけるのではなく、「信頼され続ける会社」になるための長期戦略としてのブランディングが、今まさに求められています。
短期的には集客力や採用力の強化
中期的には社員の意識改革と行動変容
長期的には企業価値と収益性の向上へ
ブランドは“仕組み”ではなく、“信頼の積み重ね”。そして、それは今の延長線上ではなく、「これからどうありたいか」から始まります。
🔰 今日から始められる、最初の一歩
ホームページやSNSは、自社の想いをきちんと伝えているか?
名刺やパンフレットに統一感はあるか?
スタッフの対応は、理念と一致しているか?
これらを“第三者の目線”で見直すだけでも、ブランディングはすでに始まっています。
✅ まとめ:
再生とは、過去を塗り替えることではなく、“らしさ”を整えること。それが、本質的なブランディングの力なのです。